続いて、話題は作品づくりのプロセスへ。企画・製作のどの段階から海外の観客を意識しているのかという問いに、「考えますね」と即答したのは村田。特に映画製作の際に意識することが多いという村田は、「最近は配信ドラマも同時期に海外で観られることがあるので、考えています」と意図を説明。
「アメリカ人は、アメリカ人のために映画を作っていないんです。世界中で観られることがデフォルト」と説明しながら、「映画は後に形となって残るもの。50年後の日本人が面白いと思えるものを作らなきゃいけないというマインドがあるので、海外の方のことを想像することは難しいのですが、“これはわからないかな”と感じるものは省くようにしています」と舞台裏を明かした。
さらに、当事者ではない方が当事者に寄り添い支援する“アライシップ”というテーマについても話題に。 “アライシップ”の観点も踏まえ、3年連続で男性ゲストも登壇してきた、この「ウーマン・イン・モーション」のトークセッション。女性がより力を発揮できる環境づくりについて質問が投げかけられると、二宮は「とにかく、女性の方々のコミュニケーション能力が高いなと。この業界だからというより、生きている生活圏内の中でもすごく感じます」と振り返りながら、「人と向き合うことが男性はそんなに得意ではないと思うので、女性の方々がコミュニケーションの場で引っ張ってくれるのはすごくありがたいです。安心して働ける環境が作られているなと実感します」と、女性たちが活躍することの意義を強調した。
そんな両者の言葉に続き、ミュージアムを率いる立場にいるホンマも、「私自身、いろんな決断をする立場として、皆を率いる立場として、力を持たせていただいているわけですから、思いを分かち合いたいですし、他の女性たちのことにも目を配りながら仕事をしていきたいと思っています」と、女性たち誰もが力を発揮できる環境づくりへの意欲を示した。
作品づくりや異文化との出会い、互いに与える影響や女性たちの働き方など、多岐にわたる話が飛び交う中で、トークはアジア映画についての話題に。ホンマは『パラサイト 半地下の家族』(2019年)を挙げながら、「(『パラサイト』をきっかけに)アメリカでは字幕で作品を観ることが慣れてきた、という効果もありました。さらにコロナ禍を経て、自宅で多様な作品を観るという習慣もついたと思います」と変化を明かす。
「アカデミー・ミュージアムでは50〜60年前の作品の上映も行っています。黒澤明監督の特集もしましたが、なるべくフィルムで上映したいと考えているので、10本ほどフィルムもお借りしました。上映の何時間も前から並んでいるお客さんもいたほどで、若い観客にとっては素晴らしい体験になったと思います」とコメントし、国籍や時代を超えて名作を次世代へとつないでいく取り組みを紹介した。
この話には、二宮も「性別や年齢、生きている時間や職種も違う中で、映画という共通言語の中で通じ合えるのは、エンタメ以外で考えにくいものだと思いますし、劇場体験をするというのは重要ですよね」と共感を示した。
本イベントでは、ホンマが“女性”をテーマに、自身に影響を与えた映画を6作品セレクト。その中から、トークセッション後には、ルル・ワン監督がメガホンをとった『フェアウェル』(2019年)を上映。『フェアウェル』について、「この作品が大好きです」と愛を滲ませるホンマは、「自分が大人になる中で、家族とのつながりがどれほど大事なことか、それを教えてくれる作品で、非常に胸に響きました。(ルル・ワン監督は)とても才能のある監督だと思いますが、アジア系アメリカ人のストーリーテラーとして独特の観点で物語を紡いでいます」と語り、これから作品を鑑賞する観客に向け魅力をアピールした。
最後のトークテーマとなったのは、“次世代と日本映画の未来”。まず、映画文化を次世代へと継承していくことについて、ホンマに次世代の創作へどのようにつなげていきたいかという質問が投げかけられると、「アカデミー・ミュージアムでは、映画の裏側をお見せすることができます。映画を観るだけでは普通の映画体験にすぎませんが、その舞台裏ではどのような方達が映画に貢献したのか、そのストーリーを見ることができます。それが、未来の作り手たちのインビテーションになっているのではないかと考えています」と語り、ミュージアムの存在が次世代の作り手たちの創作意欲を刺激するきっかけになると期待を寄せた。
そして、日本の映画業界で活躍する村田、二宮には、10年後の日本映画界で、ひとつだけ変わってほしいことについての質問が。村田は「子育てをしながら働いている女性の方の中には、子供が熱を出して仕事を休まなければならないような場面に直面することもあると思います。そう言った時に、産休や育休だけではない、もう少しゆとりを持って働けるような制度や環境が整ったらいいなと」と語り、未来への期待を込めた。
二宮は「いろんな角度から、さまざまな意見をいただく時代になってきていると思いますが、その分、面白いと思える作品を作ることが難しい時代になってしまうのは、良くないとも思います」と複雑な胸の内を吐露。「とにかく、良い作品で良いお芝居をして、“あの作品を観て映画業界に入りたいと思ったんです”と言ってもらえるような環境を作っていきたいなと思います」と語り、決意をにじませた。
世界的な注目を集める日本映画の現在地と未来、そして映画文化を支える多様性や創造性について、それぞれの視点から考えや思いが語られた本イベント。会場からは盛大な拍手が湧き起こり、イベントは大盛況の中幕を閉じた。
提供:オフィシャルレポート(一部加筆・修正)

